【2025年展望】今後の通関制度の動向とACPの位置づけ:DXとグローバル化が加速する中での変化

国際物流は、テクノロジーの進化、地政学的リスク、そしてグローバルなサプライチェーンの再編といった大きな変化の渦中にあります。これに伴い、各国の通関制度もまた、効率化、セキュリティ強化、そして利便性向上を目指し、絶えず進化を続けています。

物流業界のプロフェッショナルとして、2025年を見据えた今後の通関制度の動向と、その中で「ACP(Attorney for Customs Procedures:税関事務管理人)」制度がどのような位置づけになっていくのか、考察を交えながら解説いたします。

今後の通関制度の主な動向予測(2025年版)

2025年に向けて、日本の通関制度は以下の方向性で進化していくと予測されます。

  1. デジタルトランスフォーメーション(DX)の更なる加速:
    • ペーパーレス化の徹底: 現在も進められているNACCS(通関情報処理システム)を中心とした電子申告は、関連書類の電子化も含め、より一層徹底されるでしょう。AIを活用した書類審査やリスク分析も導入が進み、人の介在を最小限にする動きが加速します。
    • データ連携の強化: 税関だけでなく、他省庁(経済産業省、厚生労働省など)や物流関連事業者(船会社、航空会社、倉庫業者など)とのデータ連携基盤が強化され、よりシームレスで効率的な情報共有が実現される可能性があります。ブロックチェーン技術の活用なども視野に入ってくるでしょう。
    • ビッグデータ・AIの活用: 膨大な通関実績データや世界情勢の変化などをAIが分析し、リスクの高い貨物をより的確に特定するシステムが高度化します。これにより、不正貿易の防止と、正当な貿易の円滑化が両立されることを目指します。
  2. サプライチェーン全体のセキュリティとコンプライアンス重視:
    • AEO制度の重要性の高まりと相互承認の拡大: AEO(認定事業者)制度は、今後も国際標準としてその重要性を増していくでしょう。各国とのAEO相互承認がさらに拡大し、認定事業者にとってはより多くの国で手続きの簡素化・迅速化といったメリットが享受できるようになると期待されます。
    • 経済安全保障の観点からの規制強化: 特定の国や品目に対する輸出入規制が、経済安全保障の観点から強化・見直される可能性があります。これに伴い、原産地規則の厳格化や、より詳細な情報提供が求められる場面が増えるかもしれません。
    • サステナビリティ関連規制との連携: 環境規制(例:炭素国境調整措置)や人権デューデリジェンスなど、サステナビリティに関連する国際的な動向が、輸入規制や申告項目に影響を与える可能性も考慮しておく必要があります。
  3. 越境ECの拡大とそれに伴う制度整備:
    • 小口貨物の迅速処理と適正課税の両立: 増加し続ける越境ECによる小口貨物に対し、迅速な通関処理と適正な関税・消費税の徴収を両立させるための新たな仕組みやシステムの導入が進むでしょう。
    • プラットフォーマーの責任明確化: 大規模なECプラットフォームに対し、出品者のコンプライアンス確保や納税に関する一定の責任を求める動きが国際的に強まる可能性があります。
  4. 自由貿易協定(FTA/EPA)の更なる活用促進:
    • 締結済みのFTA/EPAの利用率向上に向けた周知・啓発活動や、利用手続きの簡素化が進められるでしょう。また、新たなFTA/EPA交渉も継続的に行われ、対象国・品目が拡大していくことが予測されます。

今後のACPの位置づけと役割の変化

これらの通関制度の動向を踏まえ、ACP制度およびACPを担う通関業者の位置づけは以下のように変化・進化していくと考えられます。

  1. 非居住者による日本市場アクセスのハブとしての重要性は継続:
    • 日本市場の魅力は依然として高く、海外事業者が日本に物理的な拠点を置かずにビジネスを展開したいというニーズは今後も続くと考えられます。そのため、ACP制度は、非居住者が日本で輸入を行うための基本的な枠組みとして、その重要性を維持するでしょう。
  2. DXへの対応能力がACP選定の重要指標に:
    • 通関手続きのデジタル化が加速する中で、ACPを担う通関業者が最新のテクノロジーやシステムに対応できているかは、依頼者にとって非常に重要な選定基準となります。データ連携やセキュリティ対策、そして効率的な電子申告プロセスの提供能力が問われます。
    • 顧客(海外の事業者)に対し、デジタル化された情報共有プラットフォームを提供できるACPは、より高い付加価値を提供できるでしょう。
  3. 高度なコンプライアンス体制とリスク管理能力の要求:
    • 法改正の頻度が増し、規制が複雑化する中で、ACPにはより高度な専門知識とコンプライアンス体制が求められます。特に、経済安全保障やサステナビリティといった新たな規制分野への対応力は、ACPの信頼性を左右する要素となります。
    • 潜在的なリスクを事前に分析し、顧客に適切なアドバイスを行うコンサルティング能力の重要性が増します。
  4. 越境EC分野でのACP活用の拡大:
    • 越境ECの拡大に伴い、海外のEC事業者がACPを利用して日本へ商品を輸入し、直接販売するケースが増加すると予測されます。この分野では、小口・多頻度の輸入に対応できる効率的なオペレーション体制と、返品処理などを含む包括的な物流ソリューションを提供できるACPが求められるでしょう。
  5. AEO認定ACPの優位性の明確化:
    • AEO認定通関業者がACP業務を行う場合、その信頼性や手続きの円滑化への期待はより一層高まります。税関も、AEO認定事業者を介したACP通関に対しては、一定の信頼を置く傾向が強まる可能性があります。
  6. コンサルティング機能の強化と付加価値の提供:
    • 単なる手続き代行に留まらず、日本市場の規制動向、FTA/EPAの活用提案、サプライチェーン最適化のアドバイスなど、より高度なコンサルティングサービスを提供できるACPが選ばれる時代になります。顧客のビジネス成長に貢献できる戦略的パートナーとしての役割が期待されます。

まとめ:変化への適応と専門性の深化が鍵

2025年に向けて、通関制度はDXとグローバル化の波に乗り、大きく変化していくことが予想されます。その中でACP制度は、海外事業者が日本市場へアクセスするための重要な手段であり続けるでしょう。

しかし、ACPを担う通関業者には、これまで以上に高度な専門性、テクノロジーへの適応力、そして変化を先読みする洞察力が求められます。私たち(貴社名)は、これらの変化を的確に捉え、お客様の日本におけるビジネスを成功に導くための最適なACPサービスを提供し続けてまいります。

今後の通関制度やACPの活用についてご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。最新の情報と専門知識に基づき、お客様のビジネスをサポートいたします。

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